映像技法、マスターショット

初学では15分にひとつのペースで学習することを推奨。

マスターショット習得のワーク
1日1回ここに↑ランダムに出現するショット画像に対して使えそうなシチュエーションを数個考え書き出しましょう。

パースの基礎

・カメラを水平に構えると水平線は画面中央にくる。
・目高で水平に撮影すると同じ目高の人物の目は水平ラインに揃う。
・カメラに対して同一平面上で水平移動をしてもサイズ感は変わらない。

カメラレンズの選択とその効果

・人の目で見たときに近いレンズは50mmで、標準レンズという。
・標準レンズで演者と同じ距離感を保つとその人物の動きに強い親近感を抱くようになる。
・望遠レンズは、距離感の圧縮を起こす。
・降格レンズは、距離感の引き延ばしを起こす。動きを派手でインパクトのある絵作りをする。部屋を

ショット基礎

・肩越しショットは、その人物の視点で、観客がその人物に感情移入することを促す。
・ダッチアングルは、あえて画面を傾ける撮影法のこと。移動ショットの一環として取り入れると良い。多用しすぎは禁止。
→2巻の3-1
・演者の動きをピッタリとマークしてフレーミングを維持すると、観客はその人物の苦境を肌で感じるようになる。
・ドリーとは、カメラを水平移動すること。レールや車を使うことがある。前方移動はドリーイン、後方移動はドリーアウト。ドリーとは台車のこと。
・パンとは、三脚の首を振るなどでカメラ位置を固定したまま水平方向あるいは垂直方向にフレーミングすること。語源はパノラミング。
・ティルトとは、カメラ位置を固定したまま垂直方向にフレーミングすること。ティルトアップ、ティルトダウン。
・トラックとは、被写体の動きに合わせて移動撮影すること。トラッキング、追跡の意味。

・ワンショットで撮り切るということの意義
縁者がより役柄に入り込み、それを見る観客もより自然に作品世界に引き込むことができる。
※撮影時、リバース用のカメラが映り込んだり何度も設置をし直したり複数カメラを準備できたりということはほとんど無い。同ポのショットは一気に撮り切る。カットが多いと非連続な演技が求められる。その反対がワンショット。

 

マスターショット100 -1

chapter1 バトルを描く


1-1
望遠レンズを使って実際は殴ってないのに殴ってるように見せる。
引きのショットでも寄りのショットでも機能する。
陰になる部分に5-7cm離したところに拳を繰り出す。

1-2
殴る側の人物の動きの勢いに応じたカメラの動きを使ってパンチの余韻を残す。
殴る側が近づいてくるのに合わせて、気圧されるかのようにカメラを後退させる。
パンチの瞬間に後退をやめ、パンチがカメラに当たったかのようにパンさせる。ショットの中心は殴る側のパンチ
やられる側の肩越しショットにするとやられる側へ感情移入させてしまうのでよくない。

1-3
演者の横、顔の高さ、一定の距離感を保ち、一方の演者を注視しつつ一緒に動く。
取っ組み合いが終わるまでパンは使用しない。

1-4
カメラは殴る演者の背後、目の高さでとらえ、殴られた人物がフレームアウトする。
殴られた人物は、ゆっくり地面に横たわり、それに少し遅れてカメラが下に移動する。

1-5
インパクトの瞬間に攻撃者のカットからやれれる側のカットへ切り替える。
どちらのカットも低い位置からとらえる。
攻撃者のカット時は何か柔らかめのものを蹴らせる。
やられる側のカットでは、望遠レンズで距離を圧縮させて当たってるかのように見せかける。

1-6
殴る側の肩越しショットは通常の撮り方をする。
リバースで、殴られてる側の人の肩越しショットを撮る時は、テーブルの上で演じてもらい、一段下からカメラを構えられるようにする。

1-7
2者が立っているところから始めると効果的。
倒した相手は実際に殴れる詰め物などで代用する。
カメラは攻撃側のウエストあたりから上を見上げる。

1-8
勝者と敗者で明確に異なる照明とレンズを使いコントラストをつける。
勝者の表情が読み取れその考えを理解できる。
敗者は標準レンズか望遠レンズで勝者の目線として撮る。
最後、勝者のカットから敗者がフレームアウトすることで勝者だけが残り戦いの終焉を知らせる。

chapter2 追跡と逃走を描く


2-1
標準レンズで逃走する演者の正面近くから距離感を保ちフレーミングを維持しながら伴走する。
追跡者は映さない方がより恐怖感を煽れるが、最後、逃走者が気付かぬところで追跡者の姿を見せる演出をするとサスペンス感が増す。
走りにくい地勢(坂登り、方向転換)を苦労して逃げさせる。

2-2
逃亡者が横切って走るのをカメラがパンで伴走し、画面奥からは追跡者が手前に迫ってくる。
望遠レンズを使い追跡者がより近くに見えるよう演出する。
カメラ〜逃走者〜追跡者の距離は等間隔にする。
木々などの障害物があると躍動感が出る。

2-3
広角レンズ
を使うことで、周りの壁を大きく写し、逃走者の動きを派手にしスピード感をもたせることで、あたかも狭い空間に入り込んだ感覚を演出する。
路地の中央でカメラを構えて、演者が迫ったら道を譲りパンをしつつカメラ位置を下げて逃走者を煽る。逃走者はチラッと振り返りそのまま逃げて画面外に消える。

2-4
逃走者が逃げ込みたいと思ってるゴール地点があるとより効果的。
逃走者の背後から望遠レンズで追う。目標地点も近く見えるのになかなか着かない。
追跡者は前方から少しずつ後退する広角レンズのカメラでとらえる。動き・スピードが誇張され今にも追いつきそうな状況を演出できる。

2-5
主人公が観客より先に何かに気付く状況。
小休止してる逃走者の頭部より低い位置にカメラを構えて観客も一安心させる。主人公が物音を聞いて振り向く。逃走者目線の望遠レンズで追跡者を映す。
主人公が寄りかかれるものがあれば敵に見つかっていない状況に説得力を持たせられる。

2-6
悲鳴や足音などの音で危機が迫っていることを伝える。
怯えながら周囲を見渡す逃亡者を写し観客の同情心を煽る。
追跡者目線の広角レンズで忍び足で角を曲がり、逃走者を次第に映す。遠くにいる逃走者を素早く狙う感覚を演出できる。

2-7
追跡者目線に見せかけたカメラ(標準レンズか広角レンズ)が逃亡者のすぐ後を追うが、本当の追跡者は後からカメラにフレーム外から現れて逃亡者を捕まえる。
逃亡者のゴールがあると先に期待感を演出できて効果的。
ショットの長さは数秒に抑える。
逃亡者者が何かにぶつかったり転びそうになったりしながら進むと、緊迫感を演出できて効果的。

2-8
追跡者が一瞬だけ障害物の陰に姿を消す→それを見る逃亡者→最初のよりずっと焦点距離の長い望遠レンズでフレームに追跡者が入ってくる。
これにより急に距離を詰められた感を演出でき、観客もギョッとする。

2-9
障害(鍵のかかったドア等)にぶち当たりまごついているところに背後からカメラが追いつく→ゆっくり後退するクロスカットで追跡者を捉える。
追跡者はクリアに捉える必要はない。倒れてても遠くにいても効果を発揮する。
捕まったら即座にゲームオーバーになるような大きな危機が迫ってる時ほど効果的。

2-10
カメラを低い位置、追跡者の足元後方を捉えることでその躍動感と奥にいる相手との距離感を描写する。
追っているという事実を伝えるショットの間に挟むのが望ましい。
ショットが長すぎると観客にフラストレーションを与えるので注意する。
ドリーでも手持ちでも機能する。
※平行線上うんぬんはよくわからない。mayaでやってみて

chapter3 登場と退場を描く


3-
1
主人公であることを演出する。
主人公に多めに照明を当てる。同じ平面上の群衆を主人公より低身長で構成する。
カメラは主人公の身長に合わせ群衆をやや見下ろす。群衆は静かに立っていること。特徴的なな顔や素ぶりの目立つエキストラがいないように注意する。これにより主人公の能動性を示唆できる。

3-
2
平凡な描写から始め、カメラが動くことで背景の奥にいる主人公を映し出す。
ショットの出だしは、固定カメラでも成立するような画面構成にする。
主人公に特別な動きがないことで、そこにドラマ性が生まれる。
視覚的な効果が生きるように音などで主人公の登場を示唆しないこと。

3-3
カメラは望遠レンズ。基本的に動かさない。

重要なことを告げる、人生がガラッと変わる決断をする、課題へのアプローチの変更などの演出。

3-4
望遠であるほど人物がクリアに写せるが、扉の枠は額の役割があるのでフレームに収める。また、
御開帳中は必ずカメラは固定にする。
強烈でパワフルな印象を与え、重要人物であることを演出できる。
扉を開ける人物がいる場合、開けた直後に脇へ移動させる。
より強烈な印象にするには全てが静止する間をつくり、人物がおもむろに人物が前進するようにする。

3-
5
窓が閉じられると映画の一幕の終わりなど、変わり目を演出できる。逆にドリーインすると観客は何か新しいことが提起されることを期待する。これを組み合わせ、最終的にカメラが寄るだけで何も起こらないことで唐突に終わった感を演出できる。
窓が閉められるだけでなく、電気が消え、人物が視界から消えるなどでより効果を高められる。


3-
6
重要なのはその場に残った者の視点で会話の相手が入れ替わることをカットを切らずに見せること。
主人公目線(相手Aは話し終えて背を向ける)→Aを見ている主人公→主人公目線(遠ざかるA、寄り気味に相手Bがフレームイン)→主人公とBのショット
相手の入れ替わりで素早いフォーカスの調整が必要となる。
より自然に見せるためにカメラの移動を使ってもよい。


3-7
カメラを演者の経路と直角になるように構え、最初はパンだけで追う。

演者がカメラの前を横切ろうとするとき、パンしつつわずかに前進を始め、その演者の通った軌跡まで移動する。
これにより、観客に演者を見送る気持ちを芽生えさせられる。

3-8
歩いている演者の横やや後方の少し離れた位置からドリーで一緒に移動する。
演者が方向転換しカメラのほうに向かってきたら徐々にカメラの速度を落とし動きを停止させる。

同一ショットで物語の展開を続ける場合はカメラ前で演技をさせる。
別ショットで物語の展開がある場合は、カメラを通り過ぎて歩き去らせる。
カメラのアングルは最後に演者を映すアングルを基準とし、基本は最初の段階から移動以外はあまり大きく動かさなくて済むようにするとよい。

chapter4 スリル・潜入・探索


4-1
敵に見つからぬよう、こそこそ動き回る。
カメラを演者と同じ方向に背を向けたままかすかに移動する。
演者はあちこち見るが、身体はまっすぐカメラに向かってくる。
演者はカメラの前まできたら一旦止まる。そのあとは画面から移動するなりなんなりする。
演者が向かう先は危険があるが、そこにすこしずつ背を向けて向かうということで観客の恐怖心を煽れる。


4-2
事前の描写で何かに追われているという大前提があること。
演者のクロースアップショット(固定)→唐突な何もない目線ショット見渡すように動かす(手持ち)
まるで大きな恐怖に襲われてる姿を演出できる。

4-3
フレーミングが大事。演者は肩越しよりは大き目に後ろ姿をとらえる(頭全体が入るetc)が存在は控えめに映す。
画面中央は何もないが明るめのライティングを施し、そこに何かが現れることを観客に予期させる(視線誘導)。

4-4
歩く演者の目高にカメラを構え、同じ速さで後退する。
→演者の視線でとらえる。
真っ暗な夜道を歩くときのような恐怖感を演出できる。

4-5
ローアングルできょろきょろしながら動き回る主人公をパンでとらえる。
周囲の環境が見えにくく、謎に満ちた雰囲気を演出できる。
→最終的に、カメラをパンさせながら後退移動させ、肩越しショットにして周囲の空間を見せる。

4-6
交互のカットバックでは同じくらいの尺間にする。
何かしらの緩急をつけると出会うことを観客に感じ取られてしまう。

4-7
動き回る演者の後を一緒に追うショット→演者の目線ショット
画面切替は演者の顔の振りのアクションつなぎでカメラにも振りを入れるとよい。
演者の表情は見せずに、観客に演者の気持ちを味わってもらう。
探し物が何か事前に明確に観客に知らせておき、見つかった瞬間にはじめて演者の表情を映すなどの演出が有効。

4-8
事前に何かを探しているということを観客に知らせてあることが前提。
何かを探し回る演者を固定カメラのパンだけで追う。
わずかなティルトは必要に応じて使用可能。
シーンの最後にそれなりの結末があると面白くなる。

4-9
望遠レンズで距離の圧縮をし、同ショット内に演者と遠くから近づいてくる危険を同時に捉える。
カメラ~演者~近づいてくる危険はだいたい等間間隔に配置。
演者のフレーミングは左右どちらかに偏らせる。
反対側に対象の危険をフレーミングし、不明瞭にあえて映す。

chapter5 ドラマティックな変化を描く


5-1
カメラの高さは演者の頭部の高さ。望遠レンズで背景はぼかし。
正確なピント調整をしながらカメラの急な寄りをおこなう。
演者の目はフレームの同じ位置をキープする。
演者のどちらかの目を画面中央付近に設定しておくとやりやすい。
カメラが動いていることを観客に察知されずに寄ることで、観客を演者の感情に引き込むことができる。
演者の視線が極端にカメラ目線にならないよう注意。

5-2
標準レンズの固定カメラでアップの演者がよろけるように後退し画面から遠ざかるさまを映す。
画面から演者が外れてしまう場合は、必要に応じてカメラをティルトダウンさせる。
ティルトするときは演者の両目の水平が崩れないように注意をする。

5-3
望遠レンズで長距離をドリーしながら、弧を描く演者の動きをパンで捉える。
映像的には背景だけが素早く流れる。

5-4
望遠レンズのカメラを演者の頭の高さにし、肩越しショットで2人の演者の会話を捉える。正面を向けていた演者が歩き去る瞬間に肩越しだった演者の正面、もう一人が居た場所に回り込む。

5-5
演者の表情演技を重視し、きちんと捉え続けることを意識する。
望遠レンズで、一歩を踏み出した演者に同じスピードで寄り付き、すれ違うときはパンをし移動も継続し、最後ワイドショットでこれから立ち向かう世界を描写する。

5-6
リバースショット
敵の元から戻ってくる演者がカメラの脇まできたらパンをはじめ、演者は後ろを振り返るところをとらえる。
演者の足が止まった段階でカメラも動きをとめる。
カメラはドリー設置でも手持ちでも可。
長回しのショットの最後に持ってくると有効。

5-7
カメラは演者の前方進行方向を邪魔するかのように一定の距離で捉えつつ後退する。
演者が逃げている原因となっている別の人物が背後を追ってくるようなシチュエーションでは、カメラと人物にサンドイッチされる形で緊張を高められる。
追う側の人物はクリアに写らなくても問題ない。

5-8
エキストラが行き交う向こう側に自失の演者を正面に捉え、カメラを寄らせていく。
望遠レンズを使い、フォーカスは演者のみに絞り、エキストラはぼやけるようにする。
これによって、演者の視界がぼやけてしまっている感じが演出できる。
演者の後ろが壁であると、空間的にも行き詰っている様子を演出できる。
エキストラ同士が画面内で交錯しないよう注意。
演者の目線はレンズに極めて近いようにすると凝視する視線の強さを増せる。

5-9
演者の頭の高さで演者の正面クロースアップを望遠レンズでとらえ、その前を妨害するかのように小道具が横切る。その瞬間、演者は背を向ける。
→反対側の遮った小道具が映る程度にやや引きのカメラ、より短いレンズで振り返る演者の顔を捉え、少しだけ近づける。
最初の演者の目線はカメラの向こう、目標があるように見つめていること。
小道具はそれなりのサイズ感があり、演者の目的を阻んで邪魔をしている感覚が演出できるものを選ぶ。

chapter6 新しい事実の開示を描く


6-1
カットを割らずに鏡のドアへの映り込みで2か所の状況をワンショットで描き切る。
2か所の照明環境が大きく異なっても混乱させずに描写できる。
ミラーがドアについているならその枠を映すと説得力が増せる。

6-2
演者Aの肩越しショット、演者BCがカーテンのように脇へ移動すると、そこに新たな人物ないし新事実が開示される。
演者Aもここで初めてそれを知ったという状況をしっかり描くこと。
最初、隠れているものはぼやけてるか一部は見えているか、存在そのものは開示しておく。

6-3
照明とフォーカスで群衆のなかの演者を識別可能に描く。
望遠レンズでフォーカスが合う範囲を狭め、演者以外がボケるようにする。
照明のコントラストのある立地を選び、演者が明るく照らされるようにする。
エキストラの目線は演者と比較して、うつむいているか、そっぽを向かせる。

6-4
カメラはやや低い位置から見上げる。
暗がりの演者、髪の毛と人物の輪郭、人物同定可能→演者が一歩踏み出し光の中に表情を見せるタイミングでカメラはその場でティルトアップ。
すでに登場してる人物が中盤にさしかかり再登場するとき有効。演者に歩ませることで物語に加わってきた感じを出したいのでカメラを水平方向には動かさない。

6-5
頭かそれ以上の高さで歩いている演者を後退しながら映す。
→演者が事件を目撃し表情を変化させたらカメラは後退をゆっくやめ、演者が通り過ぎるのをパンで追う。→演者は肩越しショットの位置で立ち止まる。向こう側には事件の様子が映し出される。
事件は暴動など動きのあるものの方が効果を発揮しやすい。

6-6
演者は自身の右へ移動するのを、カメラも自身の右へ移動しつつパンで同じフレーミングを維持すると、あたかも背景だけが流れて演者を飲み込むかのように演出できる。
焦点距離の違うショットを同じ撮り方(動き・フレーミング)でジャンプカットで繋ぐことも有効。
演者が動く理由、事件との間合いとり、探りなどがあると良い。

6-7
望遠レンズ、頭より低い位置のローアングルで演者が走ってくるのと同じスピードで演者に寄る。
次に来るカットは、演者の目線とか肩越しショットなど。

6-8
カメラは演者の頭の高さで寄りのショット。
物思いに耽る演者(座ってるとよい)を捉える→足音に気付く前後からカメラ移動開始→カメラが最終地点についたくらいに、演者がゆっくり振り向き奥から別の演者が近づいてくるのがフォーカス移動で開示される。

6-9
いったん固定のワイドショットで全体像を映す→
望遠系の長めのレンズを使い、視線をスライドさせて対象物を捉える。出だしと終わりは一瞬の静止映像ですばやい目の動きを表現する。
リアルな視界はズームできないが、より詳細に観察しようとする人物の心の現れとして捉えられるので違和感は出ない。

chapter7 ショック・ホラー


7-1
演者が通路をその入り口から見つめているが、通路の状況はカメラから視認できない。カメラは演者を左端に捉えながらシンプルなトラック移動とパンで入り口に近づくと何もない通路が開示される。
演者は、映らないようハケるか、通路へと歩き出す。

7-2
危険があるかもしれない場所で演者が1人でいるようなワイドショット。
→演者がカメラの向こう側の誰かに話しかける。(物音など偶発的な何かに反応するより演者が主体的に動いた方が良い。) 観客は対話を期待してリラックスする。
→第3の人物が急に飛び出す。このときクローズアップショットにしてもよい。

7-3
カメラの位置やアングルが変わっても、シーンの最初から最後まで、その人物の目をまったく同じ位置にフレーミングし続ける。つまりカットが変わっても同一シーン内ではずっと同じ位置に目を映し続ける。被害者のカットでもその被害者の目の位置を合わせると恐怖感を強調できる。
肩越しショットでも適用可能。
目のフレーミングがずれないよう演技を抑えめにする必要がある。

7-4
広めの空間で壁際に追い詰められた演者の表情を壁際付近のカメラで捉える。演者は画面どちらかにフレーミングし、広く暗い背景を反対側に映す。
→リバースの演者の目線ショットで何もない空間を映す。(肩越しNG)人は場所そのものではなく、そこにありそうなもの、そこに出現しそうなものに恐怖を感じる。
※ムービーではリバースショットではなく演者が背後を振り返った空間を、望遠レンズと別フォーカスでつないでいる。

7-5
演者はカメラへ向かって道を歩いてくる。
→演者がカメラの近くまで来ると道を外れていき、その瞬間からカメラはそれを追って移動する。(明確な道、場所の明暗があればわかりやすいが、演者の方向が逸れるだけでもよい)
※演者が画面外に完全にハケていくと危ない領域へ完全に入ってしまったことを演出できる。
7-6
演者の何気ない通常描写。かがむなどの動作へのカメラのフォロー→(インサートで動作の目的のものをいれてもよい)
→姿勢を戻し、最初のフレーミングにカメラが戻ると当初はなかった何かがあるサプライズであることが観客に悟られないように別の目的のカットとして描き始める。
ワンショットで撮り切る。

7-7
カメラは歩く演者の正面を捉えている。
→物音などを合図に演者が体の向きを変えつつカメラに道を譲るが、カメラは演者のが振り向き切るより早く演者の正面に回り込み、行く手をガードする。
→演者が元の方向に向き直るとカメラもまた素早く正面に回り込みガードする。
→これを繰り返すと、行き詰まり感、不安感を演出できる。

7-8
立地などのシチュ自体が別の危険を孕んでいて、もう一方のサプライズとなる危険への意識を追いやる。
演者が何かアクションを取ろうとした瞬間にサプライズ。手を何かに伸ばすなど。
望遠レンズで演者をとらえ、(距離の圧縮で)カメラと演者の間の空間には何も起こらないと思わせておいてそこにサプライズをぶち込む。

7-9
カメラは三脚に固定し、2種類の動作を同時にしようと行き来する演者をパンで追わせる。これにより観客の注意を窓から逸らしておける。窓が見切れてもう一度現れるタイミングで敵の顔が映りサプライズとなる。
※本にはドア抑えと蛇口締めの2種動作とあるが、実際は、蛇口ではなく、少し開いた窓を閉めようとしている。

chapter8 注目を集める


8-1
演者Aが、別の演者Bから小道具を渡されるショットからはじまる。→演者Aがそれを持って歩き出しカメラの前を横切るタイミングに合わせパンを開始し、演者Cとのショットへ移行させる。

8-2
ワンショットのカメラ移動だけで場面を転換してゆく。
近づいてくる演者に合わせてドリーバックで道を譲り、その空いた空間に別の演者がフレームインし、注目が移動したことを知らせる。
演者たちが動き回ってる状況下で有効。
カット分けるよりもドラマ性や緊迫感を高めることができる。

8-3
歩く2人の演者に対してカメラをドリーバックさせ、うち1人が走り出したらパンで追って、移動は徐々に停止させる。
演者が走る理由付けが必要。
走り出す演者は、最初もう1人の奥にいて、彼の前に斜めに出てくるとスピード感やダイナミックさが出る。
走り出したのが1人なら、もう1人を見るためにカメラに顔を向けさせることができる。

8-4
画面に映る演者の目線の先にあるものを背景小道具の鏡で同時に描写する。
レンズ選びが難しい。
広角すぎると反射させる被写体が遠くに感じられてしまう。
望遠すぎると反射する背景か演者のどちらかをぼやけさせめしまう。
反射させる物体は鏡だけでなく、テーブルや壁でもよい。

8-5
スクールバスに向かって走る演者Aをカメラがフォローアップ
→もう1人の演者Bがインして手紙を演者Aに渡し、演者Aが踵を返すまでカメラは動きを継続。
→カメラは演者Bを通過して、演者Aが止まる手前で停止。手紙を読み始めたAもそこでワンテンポ遅れて停止する。

8-6
事前にその色彩を着た演者Aを描写しておく。→望遠レンズで手前にいる別の演者Bを映す。その背景奥にぼやけて映る人物が演者Aであることは色彩でわかる。
ある程度、色彩のコントラストで目立つこと。
このシチュでは、たいてい主人公は演者Bであり、色彩をもつ演者Aは存在感をもち、Bに何かしらの影響を与えるタイプである。

8-7
ほぼ固定のカメラの比較的ワイドなマスターショットでシーン全体を撮る。
演者は円を描くように動きつつ、主導権を握ってる側がカメラに顔を見せる、主導権が移ったら、立ち位置も入れ替わってそちらの顔が映るようにする。背を向けている時は、存在感が消えないよう十分な体の動きで演じる。
うまく機能しなかったときの予備ショットとして、顔のクローズアップ、手や足のクローズアップを取っておくと良い。

chapter9 車のシーン


9-1
車はゆっくり目に走る。
望遠レンズを使うことで主体が車ではなく演者であることを明確にする。

9-2
望遠レンズをつかい、ルームミラーに映った運転手の目を捉える。
タクシー内での会話の雰囲気が演出できる。
※運転手の立場の方が重要な場合は、助手座席側から撮るべき。

9-3
ゆっくりした運転でよい。演者がお互いの顔を見合うべき理由が必要。
カメラは後部座席からタスキがけの配置。右座席の人は画面右にベレーミング。逆然り。
窓が開いていると雑音が入る恐れがあるが、髪がなびきダイナミックな印象を与える。

9-4
座席の演者はやや前のめりになり、カメラは反対座席の外から望遠レンズを使い表情を捉える。窓は開け放ち、ガラス越しにしない。
画面手前にドアや車体を映さないよう注意。観客も車の中にいる感覚でいてもらう。

9-5
演者と同じ高さで動きを追う。演者が車を降り頭の位置が上がったらカメラも高さを合わせる。そのとき、少し寄ったフレーミングの映像に切り替えることでその人物との一体感を演出する。このとき演者は自然にカメラの付近に顔を向けると親近感が強まる。

9-6
カメラの高さは常に、中心にしたい人物(運転手)の高さにする。外の人物を画面右、運転手を画面左で捉えるため、それぞれフロントシート近く、ドリーを利用してやや前方からカメラを構える。

9-7
それぞれの演者に注目を当てたショットを順番に映し出す。常に2人のうち1人に注目がいくようにする。
①車の左側に大きく距離を取った位置から望遠レンズをかまえ、奥の演者Aの顔にフォーカスする。手前の演者Bはボケて、頭のサイズは演者Aと概ね等しくなる。
②車の正面に望遠レンズのカメラを据え、演者Bの顔のクローズアップを撮る。
※基本的な考えを守ればどんなアングル、フレーミングでもよい。

chapter10 会話


10-1
相手に顔を向けている演者と目を合わせない演者
それぞれのカットで演者にドリーで少しずつカメラを寄らせる。寄っていくスピードは等しくしないと繋いだときに違和感が出る。
シーンが終わるカットの終盤ではじめて静止の絵を入れてよい。交互にカットバックしてるうちは常に動かすこと。
寄ることでその瞬間の2人の親密感を演出できる。
比較的短めのシーンで機能する。

10-2
背景に特徴があると機能しやすい。
最初のフレーミングでは、背景は映っており、2人の人物がL字型に並んでいる。画面左側に体を頑なに画面外に向けている人物A、画面中央右寄りにはAに体を向けているBを映す。カメラがAの背が見えるところからAの正面に回り込みAの顔をクローズアップ、フォーカスを調整して背景とBはぼかす。

10-3
固定カメラで次の条件を満たす。
・2人の顔が同時に画面に映る。
・頭の高さは変えると効果的。1人は立ていて、もう1人は座っているなど。
・チラッと目を合わせる瞬間がある。
・視線方向がカメラに近い人物に観客は注目し、ドラマ性を感じるので、カメラのアングルハントをしっかりおこなう。

10-4
演者の目線は、テレビ、絵画などを覗き込む感じでカメラの真後ろあたりへ。視線をお互いに合わせたりせずじっと見続け、会話だけで繋がりをもたせる。カメラの位置とアングルは対象物からのものにする。
リバースショットで見ている対象物を演者の背中越しで映す。登場人物の目線の高さとアングルで映す。

10-5
それぞれのカメラは水平で高さは演者の頭部で固定。
低い位置のカメラはもう一方の演者の体の一部、腕などをナメにする。
もう一方のカメラでは1人の人物だけで構成する。レンズはショットで変えて良い。痛烈に描きたいほうをやや広角にして歪みを与えるとよい。
内的で独特の雰囲気を演出する。

10-6
カメラはそれぞれ演者の頭の高さ、少しだけ肩越しショットにする。アングル、距離感も自然に。
部屋の持ち主の方が自信ある態度で体ごと相手に向いており、相手は前方に向いたままチラッと視線を送る、
知り合ったばかりの場面などで2人の関係性を描くのに効果を発揮する。

10-7
洗面台の演者を鏡像と実像で画面の左右を大きく占有させ、背後をとっている演者を画面中央に窮屈に挟み込む。
奥の演者の視線がほとんどカメラを直視している感じを出せると観客がこの人物に感情移入しやすくなる。

10-8
横並びで歩く2人の会話を単純なドリーバックで捉える。2人の意見が食い違い向き合うタイミングでカメラの起動を曲げて少し距離を保ってとまり、2人の会話が激しくなったらドリーで接近する。
2人の人物の側面を捉えることでその関係性を描き、会話をしっかり観客に聞いてもらうことができる。

chapter11 口論・対峙


11-1
攻勢にまわってる方が歩くために半身になっていて、守勢に立っている方が正面を向いた画面構成になる。
固定カメラで、守勢演者の肩越しに攻めの演者の動きをパンで追う。
守りのほうも背後を取られないようサイドステップで円を描く様子を、攻勢視点のカメラで捉える。
以上の2つのショットを交互に繋ぐ。

11-2
演者のほんの少しの後ずさりに対して、カメラでずっと速く詰め寄る。
守勢側を画面の片側に追いやり、空いている空間にもう1人が今にも入ってきそうな雰囲気を作る。画面隅にもう1人の人物の肩や髪が少しだけ見切れると効果的。
詰め寄る時は、感情的にやると弱い犬ほど感が出るので落ち着いておこなう。

11-3
守勢側の演者の前にカメラを配置して、攻勢側を捉える。→カメラをゆっくり後退させて守勢演者の肩越しショットに落ち着ける。攻勢側はカメラを追って歩かないこと。

11-4
望遠レンズを用いるので、演者は30センチ以上前進する必要がある。
詰め寄る前から、演者の顔をタイトめ(頭頂〜アゴがちょうど画面端にくるくらい)にフレーミングしておく。
詰め寄られた時に、個人的領域まで侵入された感覚を演出できる。
次の瞬間、カメラをたじろがせて後退させてもいいし、相手の演者のカットに繋いでもいい。

11-5
演者の怒りに合わせてカメラを寄せつつ、モノを振り回すような手のフリの動作に合わせてフレーミングが合うように素早くパンする。
演者の動きとピッタリ同調させてはダメ。速度感は一緒にする。
パンだけを担当する腕のいいカメラマン。ドリーとピント合わせは別の人がやるべき。要リハーサル。

11-6
固定カメラに対して、2人ともカメラに顔を向けている。手前はそっぽ向いていて、後ろは聞いてもらおうと注意を促してる構図。
演者は、気持ちが頑なに動かないことを表すため、動作もわずかにとどめる。
演者の身体動作がすべて。
この先、仲直りor破局、2人はどうしたがっているかのドラマ性を描ける。

11-7
望遠レンズで、2人の演者が足早に歩くのを横から捉える。ドリーでもパンでも手持ちでもなんでもいいが画像のブレはNG。
2人の距離感、演者とカメラの距離感を一定に保ち続けることで、会話と関係性だけに注目させられる。
先頭の人物がたまに振り返る動作をすると、もう話すことはないという素振りをしつつ口論が続いてる様子を演出できる。

11-8
カメラは標準レンズでほとんど動かさない。
演者は一度カメラ前まで来て現在の表情を見せたりしたあと、あちこち方向転換して動きの軌道が交差されるように演じる。
口論の感情が行き交っている様子を演者の動く経路で表現できる。

chapter12 キス・ラブ


12-1
視線が合う瞬間を見逃さないようにどのショットでもカメラは2人が収まるようにフレーミングする。
視覚的な緊張感を生むため、最初、演者は互いの目線を避けるようにし、目線を向ける時は交互におこなう。
いつ見つめ合うのかというドラマ性が生まれる。

12-2
キスの直前の期待と直後の反応の2人の顔の表情をカットを分けてきちんと映す。
直前ショットでは、回り込んで一方の演者の背中をしっかり写しつつもう1人の顔を捉える。
→キスの最中は、2人の演者に対し直角にカメラを持っていく。背の低い演者が頭を後ろに大きく反らせることでもう1人の演者の鼻の陰に隠れる面積を軽減させる。
→それぞれの表情のカットに繋ぐ。

12-3
カットを割らずワンショットで弧を描いて撮る。
頭より高めの位置から見下ろすアングルで、弧を描きながら、2人の演者を同等ではなく、どちらか一方を主体にして描く。主体ではない方の背中側をカメラは回り込んで、常に主体の方の顔を鮮明にとらえられるようにする。
通常キスする時は顔を右に倒すが、主体側の顔の角度はカメラに向くように演技してもらうとよい。
キスはしているがボディが離れているかどうかなど、ディテールを詰めて考え良いシーンになるよう配慮する。

12-4
キスの映像→(必要なら、会話
or服の脱がし合い)→何もないベッドのショットに2人が同時にシルエット的に少し空間をあけて倒れ込んでくる。
※次の2つはコミカルになるのでNG。
トランポリンのように勢いよく倒れ弾む、1人が倒れた後にもう1人がなかなか来ない

12-5
シーンの出だしで、カメラは2人の頭の高さか、やや上から見下ろす形で、2人の顔をできる限り寄ってフレーミングする。演者は互いに正面から顔を見合わすことなく、互いの体を弄りあう。
ショットを変えてもいいが、演者2人がお互いをどう見ているかという視点で描くこと。基本的には演者の表情に注目してし続けることが大事。

12-6
見せたいものをキレイに見せるべく計算し尽くしてフレーミングとポーズをおこなう。
例では、
女性は仰向けに横たわり顔をカメラに向けつつ視線は相手を見てるかのような角度。
男性は女性の上裸を隠さぬよう奥側側面に横たわり、顔は近づけてフレーム内に収める。

12-7
露わになる女優の肋骨と、そこに触れようとする男の手。顔はよく見えないようにし、観客の想像力に任せることで性的な印象を強める。
次のショットでは女優の顔のフレーム位置を上下反転させつつ、映っているものの大半は絡み合う体のままになっており、このカットの繋ぎにより、体が接触する瞬間の目の眩むような電気的な瞬間の感覚を描写している。

12-8
望遠レンズで局所のアップ以外をぼかす。
手の肌のシワや下着の布地のディテールなどを映す。
ポルノに見せたくないときに有効。

マスターショット100 -2

 

マスターショット100 -3